八戸の某和尚様が紹介していたものです。 「千葉かをる」さんという少女、ある日思いもかけぬ病魔に襲われた。 −脳腫瘍ー 命を助ける為には、引き換えに「光と音」を失う危険性もあった。病気になる前は、明るく元気で家族や友達と笑いころげたりしていたのだが、その日から漆黒の闇と無音の世界の中にいやおうなく踏み入れさせられた。 「みえない」「聞こえない」といった感覚器官の物理的制約以上に《絶対的な孤独》をもたらします。その《絶対的孤独》のなかにあって彼女は、心に光を感じ、音を感じ、その二つの感覚を「詩」というものを通してとりもどした。 表紙は、デザインも何も無い、横一行で『いのち咲く』と印字されてあるだけの詩集。
『どうして』 「治してなんかほしくなかった こんな辛い思いをするなら治してなんかほしくなかった いっそ ほっといて欲しかった ど うして治してくれたんだろう」 少女の苦悩は、どれほどのものであったか。絶望と不安。全てのことに対する喪失。自己存在の問い。あるいは現実からの逃避感。さまざまな苦しみ悲しみが一人の少女を襲った。
『春』 「私が一番好きな季節 それは春 目がみえなく 何もきこえないけど 花の香りと花のおしゃべりが 聞こえそうだから 私は春が一番好き」
『お母さんの肩』 「お母さんの肩 それは苦労したあとがみえるね 私を育てるのにどんなに苦労してきたのですか 今度は、その苦労を私に下さい お母さんの肩をたたくと、その苦労が 伝わってくる感じです」 絶句してしまった。人に対する思いやり、母への感謝といたわりがジンジンと胸を打つ。 ーしかしーあの病魔は少女に再び襲いかかる。
『生命ある限り』 「生命ある限り 苦しみもそれ以上の辛さもあるだろう でも、負けてはいられない 生命ある限り それにぶつかり乗り越えていこう どんなにいやだと思ってみても 強い心をもってみよう ひとつの決意だと思いながら 生命ある限り」
時に1999年10月25日未明。小さな詩集を書きつらねたノートを残して「小さな生命」は安らかな世界へと旅立った。
その詩集は、もうすぐ手元に来るはずです。また紹介したいとおもいます。
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